Dear. アカリ




夏の暑さはこっちもまだ続いているよ。

今年もサクラは、僕が羨ましくなるくらい、無事に夏バテせずに元気に過ごしたよ。



去年に植えたプチトマトとキュウリがおいしかったからって今年もはりきって、

君の畑にたくさん赤色と緑色の宝石を実らせていたよ。


サクラと一緒にトマトをソースにして、ミートスパゲッティを作ったり、

シンプルにサラダにして食べたんだ。

サクラの喜んだ顔、君にも見せてあげたかった。



秋にはサツマイモを植えるって一人でお買い物にいったんだよ。

ちょっと心配だったけど、ちゃんと買ってきてて、しっかりしたお姉さんに成長してるんだなって思ったよ。


たくさん採れたら、スイートポテトとサツマイモのケーキと焼き芋を作ってって言われちゃった。

まったく誰に似たんだろうね?




サクラの呼び名は今でも変わらないよ。

僕のことはパパ。君のことはママって呼んでるよ。


・・・父上なんて呼ぶわけないだろう。それを言うならアカリだって母上って感じじゃないし。

ウチにはウチの呼び方があるんだよ。まったく。




そうだ。

ママは、サツマイモが採れたら何を食べたいのかなあって、サクラに聞かれたんだけれど、何が食べたい?

サクラと君の好みってけっこう似てると思うから、

きっとスイートポテトとサツマイモのケーキと焼き芋って言うのかな。






夏には本当にいろんなことがあったね。


でもねアカリ。今でも僕は、少し夏が苦手。


君と初めて会ったのだって、初めてのデートだって。

結婚記念日も、サクラが生まれたのも、全部全部楽しくて嬉しかったことは夏だけれど。




夏が来るとかならず、あの雲を思い出すんだ。

薄い青空の向こうに消えていった、薄長い白い雲を。


あの雲は、君を乗せてどこにいったんだろう。



空の大海原のどこかで、君は今でもその雲に乗っているのかい?




アカリ。



今でもまだ、上手く空を見上げることが出来ないよ。







From. チハヤ


X14 秋の月1日








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